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2011年3月 7日 (月)

風雲文庫といふところ

 ついに念願の「風雲文庫」の門前に立ちました。それだけで感無量のふたりであります。

 表札?には「洪武」と銘うたれています。「コウブさん?」早速門をくぐりましょう。風雲文庫は熱海の左側、伊豆スカイライン玄岳ICから錦ヶ浦へ降る熱海新道の7合目ほどのところにあり、シンボルタワーである中華風の五重塔は熱海サンビーチ辺りでも見つけることが可能です。山の尾根に設置されているので、広さはないものの、庭園風にアレンジされた庭の小路をジグザグと進みます。道脇の小さな池には蛙の卵が産みつけられ、春の到来を感じさせてくれます。

Dsc01538 春ですねぇ・・・

 小路を進むと立て看板に・・・

Dsc01539 「風雲の歴史に学ぼう!」と。

見学者への心構えでありましょうや、期待は更に高まります。

 シンボルタワーである五重塔の前に大きな梵鐘が立ちはだかります。「嗚呼神州正気之鐘」であります。この鐘は左手の高所にある鐘釣場にあったものが降ろされてここに置かれたようです。「何でかなぁ?」と考えますが、すぐに無駄な疑問に恥じ入ります。ここ伊豆半島は地震の巣であります。近代以降、丹那、駿豆、伊豆半島東方沖などいくつもの震災が記録され、近年でも伊東周辺の群発地震は記憶に新しいところです。この巨大な鐘がここから転げ落ちたら、楠公よろしく千早城、赤坂城の防戦も真っ青の結果になることでしょう。下手すれば熱海城も陥落かな(笑)

Dsc01540 「沈鐘に聞け憂国の歌!」と。

 さて、鐘の前で初老のご婦人が庭の手入れをされています。「こんにちは~見学させてください。」と爽やか青年(うち1名中年)登場。朝っぱらから小結が2人も出現したので、多少驚きを隠せないご婦人に見学料1,050円ずつ支払って、五重塔に案内されます。入り口には「戦時遺品!それは最良の教師である。」との看板が。「よし!その名教師からたっぷりと学んでやろう!」と突き進む我等の後ろから、「館内は撮影禁止でお願いします。」と蜂の一刺し。

Dsc01541 五重塔は灯台なのですね。 Dsc01547 私も同感です!

 螺旋状の階段を上がるとあるわあるわ・・・地方の郷土資料館なんぞ足にも届かないほどの戦時資料が所狭しと並びます。軍装、兵器とその欠片、配給標や軍票、重大事件や大東亜戦争の局面を報じる新聞、戦地からの手紙など書類、三島由紀夫など著名人の書などの他、当時の民具や玩具、広告看板やポスター、鉄道時刻表など多種多彩に並び、普段は戦時ネタを余り語らない残党さんも興奮のるつぼに。その中で、私は紀元2600年記念観艦式(昭和15年に天皇陛下を招いて行われた帝国海軍の軍艦お披露目式)の広告が素敵だと思いました。

 この五重塔は4階までが展示コーナーで、最上階は「夢殿」と銘じられた仏間のような空間になっておりました。ショーケースの中には「乗り切り観音」様が「ハーケンクロイツ(逆卍)」を背負って立たれ、両脇にとんでもなく恐ろしい形相の狛犬?を従えております。何より我々が驚いたのが、観音様の足元に置かれた書籍。「古事記」、「日本書紀」、「神皇正統記」、「大日本史」、「日本外史」、「海国兵談」など日本史でおなじみの書名ばかりです。くたびれ方もなかなかのもので、信憑性がありそうですね。

 さて、「夢殿」から下りて、4階のテラスに出てみますと・・・

Dsc01548 左手 Dsc01552 右手

これはすごい展望!相模湾と錦ヶ浦を正面に左手には遠景に三浦半島~湘南地方、手前に箱根外輪山~真鶴半島、その手前に熱海市街。右手には遠景に伊豆大島~初島、大室山、手前に熱海市多賀~網代を俯瞰できました。足場がやや外側に傾斜していたので、高所恐怖症のふたりは及び腰でグルリ1周。

 五重塔を下りると、資料館「ヒーローの家」に通されました。こちらのテーマは「栄光」であります。ちなみに栄光とは「生きようとする最強で最高の意志を「種の掟」と言ひ、この掟故に斃されるまで斃されるまで戦う一大心意気=鬼気燃尽」であるそうです。地下の展示室に下りると!!先ほどの五重塔以上に貴重な展示品の数々。ナポレオン、ビスマルク、マルクス、ニーチェ、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン・・・近現代に名高い政治家、思想家所縁の品が展示されています。当に「ヒーローの家」です。特にヒトラー所縁の品は白眉で、彼の著書「マイン・カンプ(我が闘争)」やそれを入力したタイプ、身の回りの品々が展示されています。高速道路アウトバーンの起工式で彼が使用したスコップや東部戦線で使用した仮眠ベットなんて考えただけで気が遠くなりそうですよ・・・

 余りの高次元の空間に踏み込んで戸惑うふたり。これら全て、どれを取っても「偽りの影」が付きまといますが、そんな俗世的な考えは捨て去らなければならないと何度も何度も心に言い聞かせるのが大変でした。満身創痍で地上に上がると、ソ連軍包囲下のベルリンの総統地下壕を脱出した気分になるほどでした。「戦争は終わったんだ!」

 さて、フロントで待っていた先ほどのご婦人に思わず「すばらしい展示の数々です!」と率直な思いを叫んでしまいました。そのような叫びを何十人何百人も聞いてきたであろうご婦人は、いたって穏やかに「普通の博物館ではなかったでしょ。」と。熱海市を一望に俯瞰する窓辺に通され、コーヒーをご馳走になりました。コーヒーを飲みながら、風雲文庫の設立や設立者の話、熱海の春、山を登る桜、夜景など幅広い話題で楽しませていただきました。何より驚いたのは、空気が澄んだ日にスカイツリーや東京タワーがここから展望できることでした。いろいろなところでその存在感を誇るスカイツリー。人類の傲慢の象徴「バベルの塔」にならなければ良いと思いますが・・・何はともあれ、文庫長との対談も達成!

 最後に風雲とは「強大な意志の激突で生ずる種族的あるいは国家的な緊急事態をいう。また大風雲児を英雄と呼ぶ 」と解説されていました。B級スポットと割り切ってやって来たものの、すっかり目から鱗ならぬ風雲の化けの皮が剥がれた偽風雲児ふたり。彼らの行く末や如何に!?

 展示内容の貴重さと大展望で1,050円の入場料は安い!ここはお薦めです!

風雲文庫 熱海市熱海1949 毎週水曜日定休 見学料1,050円

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コメント

残党からも一言

最初は完全にネタ要員として訪問しましたが、良い意味で期待を完全に裏切られた感じでした。

戦前戦中の生活用品は当時の生活をしのばせるものばかり。
その当時の話を聞いたり、見たりするのが好きな私にとっては大変興味深いものばかりでした。

さらに、ブログ上にも掲載されていた景色も最高でした。おそらく、熱海の中で最も景色が奇麗なところではないでしょうか。
(残党は都人故、熱海はあまり知りませんが)

本館の展示内容については、自身の勉強不足もありましたが、それでも、多くの有名人の愛用品を間近に好きなだけ堪能できたのは、ただただ圧巻の一言でした。

私が当初感じていたように、一見するとマニアックで独特の内容なので敬遠する方も多いと思いますが、熱海一望の部屋でコーヒーをいただくだけでも千円の価値はあると思います。l
私残党も、強くお勧めしたスポットです!!
(夜景マニアとしては、夜景も拝見してみたいです)

確かに好き嫌いが分かれる内容です。しかし、五重塔には日本人として見ておく価値がある資料が多いと思います。「ヒーローの家」はお好みでどうぞ。でも私は大満足でした。「信じる信じないはあなたしだい」ときたら迷わず前者を選びますね。必ずリピートすることでしょう。

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