山行 塔ノ岳長尾尾根トレイルラン その2
丹沢山から南に位置する塔ノ岳に向かう。笹に覆われた尾根道の先に塔ノ岳のピークが見える。しかし遠方を見渡すと、東の大山には雲がかかり始め、玄倉川源流の向こうに見える西丹沢の山々も霞んできた。何やら雲行きが怪しい。
丹沢山から標高を下げ、竜ヶ馬場、日高の小ピークを越えていくと、向かいからは次々と塔ノ岳を越えてきたハイカーが歩いてくる。その中で!短パンとムキムキ脚でおなじみの名物ボッカのおじさんにも会った。相変わらず荷物をそびえるように背負っている。「山小屋かい?」とたずねられたので、「いえいえ塩水からです。」と答えると、「おー頑張るね。気をつけて!」と。山の神からお墨付きをもらったようで、少し嬉しくなった。
丹沢山から45分で塔ノ岳山頂に到着。前回は二俣方面から大倉尾根経由で4月2日に登頂をしているので、1ヶ月ぶりの塔ノ岳である。南側の大倉尾根、表尾根の両方から多くのハイカーが次々と頂上に上がってくる。雲は更に近くなっていて、蛭ヶ岳や西丹沢は霞んでほとんど見えなくなっており、大山の頂上すら雲で見えない。早々に下山コースに進むこととした。
下山コースは塔ノ岳から表尾根コースで新大日まで進み、そこからヤビツ峠へ向かう表尾根コースと分かれて、札掛に向かう長尾尾根コースを選択した。新大日までの南面の斜面では鹿が草を食んでいた。今や丹沢の植生を犯す害獣となってしまった鹿であるが、駆除が行われる猟期は3月末で終わっており、彼らは危険な時期を乗り切って、どことなしホッとしているようであった。次の狩猟シーズンまではのんびりしてもらいたいものだ。
分岐点となる新大日の小屋前で着替え長尾尾根に入る。このコースはなだらかな尾根だがその分距離があり、また登山口となる札掛は交通が悪いので、このコースを辿るハイカーは少ない。このような条件はトレイルランニングに適している。しかし、ハイカーが少ないので登山道に落ち葉がうず高く積もっていて、地形が把握しづらく不意に深みに足を取られる。
しばらく快調に下りを飛ばしていくと、どこからともなく歌声が聞こえてきた。やがて前方に大声で訳のわからない歌とも呪いとも言えない声をあげている人の後姿が見えた。山中の単独行では、時折寂しさから大声を張り上げたくなることがあるが、逆にストレス発散の絶好の機会ともいえる。追い抜く寸前まで彼は私に気付かずに歌って(?)いたが、私が真後ろに来たときとっさに「ワッ!」と言って突然振り返った。目を丸くしていたので背後の気配に驚いたのであろうが、正直リアクションが大きすぎてこっちが驚かされた(笑)「ごめんなさぁ~い」と声をかけて先を急いだ。
間もなく前方に鹿柵が見えてきた。古代秦の始皇帝は、北方匈奴の侵入を防ぐため長大なる万里の長城を築いたが、丹沢の防獣柵もこれに匹敵するものであると思うのは私だけであろうか。規模的なものはともかく、思想的な根気を感じるものはあるが。鹿柵をくぐると植林帯の中を尾根から下る急坂となり、間もなく札掛とキューハ沢の分岐となった。札掛が近いが、塩水橋に車が停めてあるのでキュウハ沢方面に進む。江戸時代から丹沢林業の基地であった札掛一帯は、丹沢らしいブナやミズナラは少ないのかもしれないが、植林帯もまた丹沢らしい一様である。現在は東丹沢県民の森に指定されていて、遊歩道が整備され、札掛森の家では林業体験や自然教室を体験できる。
キュウハ沢へのルートは右側が深く切れて、所々桟道が掛けられているが、先へ進むほどコースが荒れて崩落箇所や桟道の破損箇所も見られた。とても走れるコースではない。やがて下りになり本谷川が近づくと、対岸には先ほど登った天王寺尾根が見えてきた。川沿いの道に出て、本谷川に架かるつり橋を渡ると、往路も歩いた本谷林道に入った。例の車はまだ停まっている。11時に塩水橋のゲートに戻ってみると、ゲート周辺は車であふれていた。
☆メンツ:単独
★コースタイム:5時間40分(休憩等35分含む)
塩水橋5:25→本谷橋5:45→天王寺峠6:20→堂平コース出合7:15→(朝食10分)→丹沢山7:55~8:10→日高8:30→塔ノ岳8:55~9:00→新大日9:25~30→札掛分岐10:20→本谷橋10:50→塩水橋11:05
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