小さな軌道には日本一盛り沢山! 大井川鉄道の旅その2
大井川鉄道の第2ラウンドは、本線終点である井川駅から南アルプスの玄関口である井川へ延びるトロッコ列車井川線である。この鉄道は大井川の水力発電用ダムの建設資材運搬用として、戦前に区間半ばの市代まで建設され、昭和29年に井川の先まで開通し、その後井川ダム完成後に中部電力から大井川鉄道に営業譲渡されて旅客鉄道となった。
13時48分に千頭駅を出発。4両編成のトロッコ客車の後ろに連結されたディーゼルカーが唸りを上げて客車を押していく。井川行きは客車の一番前に置かれた運転台から一番後ろのディーゼルカーを遠隔操作する「プッシュプル運転」という珍しい方法である。我々は客車の一番後方=ディーゼル機関車の前に座ったので、天然児は大きく開いた窓から身を乗り出して、後から唸りを上げて追いかけてくる機関車を眺めていた。楽しい鉄道の旅は寒さも忘れてしまう。
千頭を出発してしばらくは、大井川をバックにした銘茶川根茶の畑を車窓に眺めながら平均時速2、30kmでのんびりと進んでいく。3つ目の土本駅は、付近の4世帯のための駅であるが、姓が皆「土本さん」であるのが面白い。昔は井川線と並行して走る道路が通じていなかったので、住民唯一の足でもあった線である。5つ目の奥泉駅は数少ない駅員在中の駅であるが、寸又峡温泉への玄関口でもある。この日は時間に限りもあるため、途中の長島ダム駅まで行って、上り線でここまで戻ってくるのだ。「もよおした」お客さんがいたので奥泉で暫しのトイレ休憩(笑)何とも親切な鉄道である。
山間の鉄道にトンネルが多いのは当たり前の話だが、25km余りの井川線全線には61箇所ものトンネルがあるとのことだ。トンネルに入るとブレーキの金属音やディーゼル機関の音が一際大きくなり、天然児も思わず耳を押さえる。
6つ目の駅がアプトいちしろ駅。井川線発祥の当初は、この付近の市代駅までの区間であったが、平成14年に完成した長島ダムが建設されると、市代から接岨峡温泉間が水没することになったため、大井川右岸の高所に新たに線路を建設することになった。そして、アプトいちしろ-長島ダム駅が現在我が国唯一のアプト式区間となっているのだ。アプト式とは、急勾配を上り下りするために、通常の軌道間にギザギザ凹凸のついた第3のラックレールが敷設され、ピニオンと呼ばれる歯車のついた電気機関車を連結して運行を補助する方式である。その昔、上信国境の碓氷峠を在来線が越えていた頃、アプト式電気機関車が補助をしていた時代があったが、現在はこの井川線のみである。その勾配は90‰(1千m進む間に90mの高低差を生じる。)という国内鉄道では最大の勾配だそうだ。
アプトいちしろ駅では牽引作業を車外で見学することができる。乗務員が旗を振って誘導すると、ディーゼル機関車よりひと回り大きなED90形電気機関車が後方から迫ってくる。勇ましい姿にカメラが向けられる。無論、天然児はフルテンションである。連結され制動テストが終わると出発。国内最大勾配といえども、電気機関車が力強く押し上げていくためグイグイと登っていく。高所に付けられた区間だけあって、大井川の水面は遥か下方になり、前方に巨大な長島ダムが迫ってくると長島ダム駅である。今回は目的地が寸又峡温泉であるため、この長島ダム駅で行き違う千頭行きの上り列車に乗り換える。電気機関車は井川行きの下り列車から離れると、今度は上り列車に連結されて坂を下るのだ。
この先も井川までの区間には、長島ダムによってできた接岨湖上にある奥大井湖上駅、秘湯接岨峡温泉があり、その先は赤石山脈が迫る大井川の峡谷に沿って、トンネルと鉄橋の連続する区間となり、高さ70m日本最高の関の沢橋梁など魅力あふれる鉄道である。何れ全線制覇したいものだ。
奥泉駅に戻り、縄文遺跡のモニュメント前で寸又峡温泉行きのバスを待っていると、山間の寒さがひしひしと戻ってきた。
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