山行 変化に富んだ黒戸尾根の長丁場 甲斐駒ヶ岳その2
尾白川に架かる吊り橋を渡って登山口に入った。しばらくは尾白川渓谷遊歩道も兼ねた、樹林の中を九十九折に登る道で尾根上を目指す。陽はとっくに昇っているが、沢沿いの斜面は風も涼しい。この日、下界の最高気温は35度にもなるという予報であった。黒戸尾根はマイナールートと信じ込んでいたが、早朝にもかかわらず登っていく人が多い。逆に自分の様に日帰りピストン派は、早朝から歩き出さないと無理だろうし。
尾根の上部に達すると道は緩やかになってきた。もう一つの登山口である横手駒ヶ岳神社からの道と出合う辺りは、笹ノ平という場所で、樹林の根元に背丈の低い笹が広がる爽やかな場所である。黒戸尾根は、昔から駒ヶ岳登拝の道だったので、よく踏まれていて実に歩き易い。所々に石碑や石仏、鉄剣が置かれていて、往時の賑わいが偲ばれる。
自分も含めて単独行のハイカーが多いが、華やかな山装束に身を包んだ若者グループもいる。天幕でも入っているのかでっかいザックを背負う人もいれば、軽装のトレランチームもいる。黒戸尾根をトレランとは恐れ入ったものだ。多彩なハイカーの中で、特筆だったのが高年女性の単独行の方。小幅な歩調で快調に歩いていた。取り敢えず先に出させてもらったのだが・・・
樹林の中を延びる急坂を詰めていく。八丁登りと呼ばれているその急坂を抜けると、視界が開けて、両側が谷へ深く切れ落ちた岩尾根が出現した。これが黒戸尾根名物の刃渡りである。「来たなぁ~」とお茶を飲みながら眺めていると、例の高年女性がヤセ尾根を渡っていった。まさか抜き返されるとは思わなかったので驚いた。が、正直なところスタートから飛ばしすぎてバテ気味でもあった。
刃渡りといっても、転落防止の鎖もしっかりとしているのでそれ程の恐怖感はなかった。難なく通過して、先の急階段を登りきると小さなお堂が設置されていた。刀利天狗と書かれた石碑が置かれていて、地図にもそう書かれていた。「刀利天狗」って何だろか?と調べてみると、木曽地方に住む天狗様で、その昔木曽御嶽山の上に更に山を積んで、富士山より高くしようとしたらしいが、失敗してしまったらしい。何ともユニークな発想だ。八ヶ岳と富士山の丈比べの話も面白いが、日本一の地位は絶えず脅かされていたらしい。人の上に立つことも同じことであろう。
黒戸尾根の名称にもなった黒戸山を大きく迂回すると、今まで登り一辺倒だった道が下りとなって、突然視界が開けて平らな広場に飛び出した。ここは五合目小屋があった場所で、小屋はかなり昔に営業を終えて取り壊されていた。休憩にはうってつけだが、アブやらコバエの類がブンブン、プンプンと煩ったい。ふと右肘に違和感を覚えたので見てみるとデッカイアブがとまっている!追い払うと血がにじんでいた。山の貴重なタンパク源となった山笑。
地図上で確認すると、登山口から五合目まで5時間50分。山頂までは・・・まだ3時間40分かぁ。でも、スタートしてから3時間半で来ているので、2時間半くらいで行けちゃうかな?と、いうのは甘い考えであることをオッサンは思い知ることになる。(つづく)
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