姨捨山伝説とスイッチバック
その昔、長野辺りに年寄りは穀潰しだと嫌う殿様がいました。(高梨氏とか落合氏でしょうか。仮に高梨政頼としておきましょう(笑))そのため、60歳に達した年寄りを口減らしのために山に捨てるよう領内にお布令を出していました。ここに一人の孝行息子がいて、彼の母も年老いたため泣く泣く山に捨てることになりました。悲しみの余り一心不乱に山に分け入った余り、息子は母と分かれる頃には自らが帰る道を見失ってしまいました。
放心状態の息子に母は静かに「ここへ来るまで木の枝を折ってきたから、その折れた枝を辿っていけば麓に帰ることができるよ」と教えたそうです。末期に至っても子を思う母の愛に打たれた息子はお布令に背いて母を家に連れて帰りました。
さて、幾月日が経って、隣国の殿様(村上義清かな(笑))がとんちめいた書状を高梨政頼に送ってきました。謎かけをして彼の力量を測って、力量がなければ攻め込もうと考えていたのです。第1問「焼いた縄を結ぶことができるかな?」・・・そんなことできるわけないじゃん。家中の誰もが首を傾げているばかりなので、高札を立てて広く民衆に問うたところ、一人の男が「縄を塩水に浸して結んでから焼けばいい」と明解を出したので、返答をすることができました。
これで引っ込む村上義清ではありません。それでは第2問「石に空いた細く曲がりくねった穴に糸を通すには?」・・・そんなことできるわけないじゃん。家中の誰もが首を傾げているばかりなので、高札を立てて広く民衆に問うたところ、またもや例の男が「糸を結びつけたアリを穴の片方に置いて、あなの反対側にはちみつを塗っておけばいい」と明解を返答をすることができました。さすがの村上義清もことごとく明解を返されて、「高梨家にはなかなか人材がいる。やはり迂闊には攻め込めないぞ」と諦めたそうです。
大喜びの高梨政頼。早速この男を召し出して、何でも欲しいものを褒美として与えるといったところ、男は・・・「褒美などはいりません。恐れ多いことですが、この度の答えは殿様のお布令に背いて匿っている母が答えたものです」と打ち明けたので、高梨は自分の過ちに気付いて、すぐに年寄りを捨てるお布令を取りやめたそうです。
もうお分かりですね。有名な姨捨山伝説です。この姨捨山とは、善光寺平と松本平を隔てる聖高原にある冠着山(かむりきやま)だと伝えられています。冠着山の山麓は峠越えの隘路として今ではJR篠ノ井線と長野自動車道、国道が通じています。善光寺平から出た篠ノ井線が聖高原を越えて松本平に至る山間区間、その中でも冠着山山麓へ登る25‰の急勾配は難所中の難所で、電車は息せき切って上り、また駆け下っています。その昔はスイッチバックの信号所が設けられて、SLやディーゼル機関車は重連で峠越えをしてたそうです。
鉄道車両の高性能化によって、今では少なくなってしまったスイッチバックを今に残しているのが冠着山の麓に位置するその名も「姨捨(おばすて)」駅です。スイッチバックもさる事ながら、善光寺平を見下ろす雄大な景色は、根室本線狩勝峠(北海道)、肥薩線矢岳越(九州)と並んで日本鉄道三景に名を連ねている鉄道マニアの間ではおなじみの駅です。近年では姨捨付近からの長野や千曲市街の夜景が人気を呼んでいます。
おっさん一人信州をさすらい、ぶらり姨捨駅にやってきました。夜景とスイッチバックの両方を見物する欲張り企画です。訪れたのは20時半。長野方面への下り電車は出たばかりなので、21時25分甲府行の上り電車を待ちます。姨捨駅はここ40年は無人駅。ノスタルジックな待合室からホームにでると・・・
当日は霧雨で煙った夜景でしたが、十分合格点ですね。ホームから夜景を見下ろしているとE257系快速列車が本線を通過して長野方面へ下っていきました。時刻表にはないので油断しましたね。この区間を上下する列車は、下界から見上げると銀河鉄道のように見えるようですよ。メーテルー!
手前の2線が引込線。一番左が本線
ワイドビューしなの23号
ワイドビューしなの23号長野行が勇ましく下っていった後、しばらくして踏切が鳴り出しました。いよいよ本番です。実況中継します。
甲府行きの211系普通電車が善光寺平から本線を登ってきました。
姨捨駅に入線します。乗客が降りて・・・カタン。またポイントが切り換わります。
再度前後逆転し、21時26分定刻で発車していきます。ポイント通過します。
右側の引込線で出線していきました。甲府遥かなり。鈍行では何時に着くことやら・・・
山中の無人駅に1時間じっくり腰を据えてスイッチバックを堪能しました。それにしても信州の夜風は身にしみるなぁ・・・へ、へっくしょん!
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