山行 北アルプスデビュー戦 蝶ヶ岳、常念岳縦走その1
山笑の北アルプスデビュー戦。いきなりの本丸狙いで上高地から1泊2日で槍ヶ岳を目指すつもりで出陣した。しかし、前泊車中泊の道中、温泉やら鉄道やら寄り道してしまい、おまけに下界は小雨模様の天気ですっかり心が萎えてしまった。これがホントの投げやりである。
そうは言っても、「槍に行ってくる!」と勇んで家を出てきたからには、「温泉と電車見て帰ってきちゃった。アハハー」では何とも体裁が悪い。それどころか「何自分だけ温泉旅行を楽しんでんだ!」と非難されるであろう。これは何としても山には登っておかないと・・・
8月24日(月)。安曇野烏川渓谷の奥にある三股登山口にやってきた。この登山口は北アルプス入門の山といえる常念岳、蝶ヶ岳の登山口になっており、松本平から車のアクセスが良いため夏山シーズンには臨時の駐車場が設けられるほどの人気である・・・が、さすがに夏休みも終盤、お盆も過ぎた平日は駐車場もガラガラ。10台ほどが停まっているばかりであった。
前夜は雨音を聞きながら眠りについたが、今朝は雲が多いものの雨は上がっている。予報はいま一つだが山の天気は下界とも違うだろうし、とにかく登ってみよう。5時半に駐車場を出発。沢音を聞きながらしばらく未舗装の林道を歩くと入山届が置かれた三股登山指導所に着く。初めての山なので書いておこう。入山届の記入時に岐阜の多治見から来たという単独行の方と話したが、「ああ、暑いところですね」という私の反応に「皆さんそう言いますね」と苦笑い。多治見とか館林、熊谷というところは夏の猛暑を語る上ではすっかり代名詞として定着してしまっている。
指導所の先で常念岳と蝶ヶ岳方面に分岐する。今回は先ず蝶ヶ岳を目指して、常念岳へ縦走して三股に戻る三角ルートである。地図上では歩程15時間のコースタイムなので、途中疲れたら常念小屋に泊まることも考慮しておく。
沢沿いの道から離れていきなり迎えてくれたのが、このルートきっての名物「ゴジラの木」である。登山者が石を口の部分に牙状にはめ込んでなかなか様になっている。自然と人が共同で創作した微笑ましい森の芸術作品といえよう。
蝶ヶ岳へ向かうルートの前半は、樹林の中を九十九折りに標高を稼いでいく道である。周辺はカラマツ、シラビソ、ツガなど針葉樹林帯で北アルプスらしいというべきか。丹沢など自分にとって身近な山行で見慣れたブナの森とは雰囲気が違う。根元には笹が生い茂って、ヤマトリカブト、サラシナショウマ、シラネセンキュウなどの花が咲いていた。初夏を飾るゴセンタチバナなどは真っ赤な実をつけていた。
天気はそれほど良くはなく、時折ガスが立ち込めてくるが、そうかと思えば突然日が差し込んできて、木々の間から前常念岳や常念山脈の稜線が見えたりもしていた。雲が稜線に上がっているようだ。西に向かうルートが南に折れると、間もなくまめうち平と呼ばれる小広い場所に到達した。ここで最初の下山者と出会ったが、早朝の蝶ヶ岳山頂からは槍穂の山並みが素晴らしかったと聞いた。
まめうち平からしばらくは緩い登りであったが、平坦地には水たまりができていて通行に難渋した。湿気が溜まりやすい場所なのか、花よりもキノコなど菌類が目立つし、木の枝からはサルオガセが垂れ下がっていた。
蝶沢の源頭部を渡ると、再び稜線への急勾配となる。この辺り多くの下山者が次から次へと下りてきた。中高年や山ガールのグループが多く、男は少なめ。そう。今日は平日なのだ。どの方も明るい笑顔をたたえている。稜線で素晴らしい展望を堪能してきたらしい。
樹林がシラビソからやや低めのダケカンバになってくると、稜線が近づいてきたらしく明るくなってきた。下山者が途切れた頃、本降りの雨となった。意地悪なお天気である。レインウェアを着込んで再出発。突如、目の前に小型のカモシカが出現した。団体さんが通過してホッとしたところの意表を突かれたようで、慌てて茂みに突っ込んでいった。残念。
三股登山口から4時間。蝶ヶ岳と大滝山の分岐点に当たる稜線に到達した。登山道が良く整備されていたので疲労はほとんど感じなかった。雨が降ったり止んだり。突然雲が晴れて眩しい日差しと青空になる。その下には素晴らしいお花畑が広がっていた。5分も歩くと蝶ヶ岳(2677m)の山頂に到達した。まだまだ歩けそうだ。(つづく)
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