ショートストーリー 晩秋鯉の乱
頃は晩秋、都内のとある池では、水面を渡る風も冷たくなって、公園の樹木も色づいてきた。暖かい頃は、池に暮らす鯉、カメ、水鳥など、多様な生物が生き生きと暮らしていたものだが、陽気が寒くなってくると亀はポツリポツリと地に潜り、水鳥たちは1羽、また1羽と南の空に飛び立っていった。そして、気がつけば鯉の姿ばかりが多くなっていた。
好機到来とばかりに、鯉勢がこの豊かなる池の専有を狙って蜂起した。広大な池の各所で鯉たちは餌場を独占し、他の生物は窮地に立たされてしまった。こうなったら戦うしかない!他の生物たちは連合し、各所で戦いが繰り返された。
亀(奇)兵隊も戦うぞ!
鳥は機動力をもって空を制するも、カメは鎧をまとい持ち前の忍耐をもって奮戦するも、やはり多勢に無勢。それに水の中ではやはり魚類には敵わない。連合軍は劣勢を余儀なくされていった。「もはやこれまで」殿を務める老亀三人衆が覚悟を決めた。その時・・・
次々と連合軍が池から逃れていく中、どこからともなく1羽のサギが飛来した。その純白のサギは、全軍を鼓舞するとともに、老亀三人衆に一計を授けた。それは・・・
サギは池の要衝に砦を築いて、老亀三人衆と共に守りを固めたのだ。その鉄壁の守りに鯉勢は攻あぐみ、遂に池の専有を断念するに至った。ここに晩秋鯉の乱は鎮定された。救われた者たちは、四英雄を称えるとともに、彼らが籠った砦を「白鷺城」と呼んだという。信じる信じないはあなた次第。
« 箱根は紅葉真っ盛り | トップページ | お昼の30分 心は高原に »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 台風は東から西へ(2018.07.28)
- 表銀座縦走直前・・・台風接近中!(2018.07.26)
- つ、つ、月夜だ皆出て来い、来い、来い(2018.07.24)
- 蓮池のほとりにて(2018.07.22)
- 不忍池の蓮の花が見頃に(2018.07.13)
コメント