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2015年12月 7日 (月)

軍馬に揺られて鹿が教えた温泉へ

 その昔、信州丸子の地に鳥獣を狩って生業とする信仰心の厚い猟師がいました。ある日、いつものように奥山に分け入って獲物を求めていると、1頭の大きな雄鹿を発見したので、矢を放つと見事に命中しました。しかし、矢が命中した雄鹿は、倒れることなくどんどん山奥へ逃げて行きます。猟師もせっかくの獲物を逃してはなるまいと必死に後を追いましたが、遂に見失ってしまいました。

 諦めきれない漁師は、その後も傷ついた雄鹿を求めて山奥深く探し回りました。どれだけの間、山中をさまよったでしょうか。諦めかけたその時、木々の間から泉で水浴びをする矢の刺さった雄鹿を見つけたのです。猟師は神仏に感謝しつつ、とどめを刺そうと矢をつがえ鹿に狙いをさだめました。

 次の瞬間、泉の中の鹿が水煙に隠れたかと思うと、代わって文殊菩薩が現れたそうです。驚く猟師を前に文殊菩薩は「この泉は温泉で傷病の治療に効能がある。日頃信仰心厚い汝にこの温泉を託すので、広く人々に知らしめよ」とおっしゃいました。我に帰った猟師が泉に手を入れると確かにそれは温泉でした。それ以来、この温泉は、鹿が教えた温泉すなわち鹿教湯(かけゆ)と呼ばれて、長く人々の病や傷を癒してきたそうです。

 そんな開湯の言い伝えが残る鹿教湯温泉は、上田市(旧丸子町)の丸子温泉郷のひとつで、国民保養温泉地に指定されています。この国民保養温泉地とは、温泉の効能、湧出量、温泉を利用した施設、交通など利便性、自然景観、環境の健全性などの諸条件が整っている温泉地だそうです。

 今回10年ぶりに鹿教湯温泉を訪れました。温泉にゆっくり浸かり、郷土料理や地酒を味わって心身ともにリフレッシュする温泉旅行本来の楽しみの他に、鹿教湯温泉では、地区内の観光スポットをスタンプラリー形式で散策する「21番名所巡り」を楽しむことができます。前回訪れたとき、当時幼かった長男がこのスタンプラリーにかなり執心だったのが、今は懐かしい思い出です。今回は天然児。しかし、宿をチェックアウトすると駐車場に直行。かの人には、温泉地を散策して雰囲気を楽しもうとは微塵にも思わないようです。21番名所巡りの核心部だけご紹介しましょう。

Dsc04931 五台橋を渡って温泉薬師堂

 温泉街から湯坂を下って、内村川に架かる五台橋を渡ります。五台橋は小さな橋ですが、屋根がついた木造の橋で実に味わいがあります。映画にもなったマディソン郡の橋に似ていることから、「日本のマディソン郡の橋」などとも呼ばれているようです。

Dsc04932 温泉薬師堂

 五台橋を渡って急な石段を登り切ると、茅葺屋根に草が生えた温泉薬師堂が出迎えてくれます。名所巡りの終着点21番の名所です。

Dsc04933 文殊堂

 温泉薬師堂の左手、小さな沢を渡ると鹿教湯温泉開湯伝説にも登場する文殊菩薩が祀られている文殊堂が建っています。ここに安置されている文殊菩薩は、かのスーパー坊主行基が彫ったといわれています。

 鹿教湯温泉は、大きなホテルや旅館はなく、山間のひなびた温泉地ですが、それだけに静かで温泉場をゆっくり堪能することができます。お出かけになってみてください。

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