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2016年8月31日 (水)

山行 嵐の富士で子は巣立つ 富士山その2

 午前1時半。台風並みの突風の吹き荒れる中、富士宮口5合目から山頂を目指して出発です。登り始めると、上の方からポツポツとハイカーが下ってきます。この風ですから、皆さん早々に登山を諦めて5合目に下山してきているのでしょう。ホレホレ、富士山の自然は伊達じゃないぞ。

Dsc07247 風さえなければ最高なのに…

 6合目までは難なく到達。でも、本番はそこからです。7合目に向かう進行方向右手には、江戸時代宝永年間に噴火して、今日まで最後の噴火口である宝永山がありますが、標高を上げるにつれて、宝永山の山頂方向(東)からもの凄い風が吹き込んできます。九十九折の登山道ですから、東向きの風上に向かって歩くときは、向かい風とそれに混じった細かい火山灰が吹き付けるのでたまりません。逆に西向き風下に向かって歩くときは、風が背中を押してくれるので楽チンです。でもご用心。自分の力加減以上のベクトルが働くので、バランスを崩す危険があります。

 登山経験の浅い長男ですから、もういい加減怯んでいることだろうと振り向くと、私のすぐ後ろにぴったりとついています。あっ!どうやら私を先に立たせて風の楯にしているようです。(「俺を踏み台にしやがった!」の心境です)これではたまったものではないので、前後を交替であるよう促しました。でも、不思議なことに、しばらく歩きに集中していると、先行しているはずの長男がいつの間にか私の後ろを歩いているのです。

Dsc07214 ヘッデンの列が続きます。

 このような悪条件下にもかかわらず、先にも後にもヘッデン(ヘッドランプ)の灯が点々と続いています。この日は月明かりが強かったので、ヘッデンを転倒しなくても歩けるほどの明るさでしたから、恐らくは灯の数以上に歩いている人がいるのでしょう。序盤戦に下山者が多いので、「こりゃあ、もうダメかもわからんね」と思ったものの、その何倍もの人が山頂を目指しているのです。まあ、遠くから計画を立てて来る人は、予定を変更しないでしょうし、はるばるやって来て麓で諦める訳にはいかないでしょうから。

Dsc07244 オリオンは何とか

Dsc07205_2 灯の下に営みあり

 月が明るいので、星空はイマイチでしたが、下界の夜景は素晴らしいものでした。特に眼下に広がる富士市の街灯りはとても煌びやかでした。富士市は製紙工場が有名ですから、24時間操業の工場地帯の灯りなのでしょう。夜勤ご苦労様です。

Dsc07254 東から雲が

 既に宝永山は遥か眼下に。その先、箱根連山の更に先に湘南の海岸線も見えています。?!何やら東側から雲が湧きあがってきたようです。近くなってきた山頂にも、雲がかかったり消えたりしています。ふむう、この風で雨も降られたらお手上げです。最初のうちは、引き返すことばかり考えていた父でしたが、予想外の粘りを見せる長男を見ていると、いつしか山頂に立たせてやりたいと思うようになっていました。

 既に8合目。標高は3200mです。息が切れるのもあるのですが、それに追い討ちをかけるように、5合目で鎮圧したはずのラーメンの残党が、再び不穏な気配を示していました。8合目の山室池田館の前で大休止していると、今まで控えめだった東雲が一気に山肌を巻いてきました。やがて断続的な霧雨となって体温を奪っていきます。「もうダメだ。帰ろう!」遂にオヤジ万歳です。

 が、「じゃあ先に下りてなよ」長男からはあっさりとした返しが。登山経験のほとんどない子を単独で行かせることだけはご法度と思ってきたのですが、長男の顔には並々ならぬ決意と意外な余裕が見て取れたので、「無理はするなよ。寒くなったら山小屋へ入れよ」つい言っていました。東の空は明るくなってきたし、歩く人は多い。何とかなるだろう。(それが山では命取りなんですが)普段グダグダな長男が見せない逞しさ。登山前には「山とは…」と偉そうなことを連発していた自分がリタイアした情けなさ。涙が出そうに(いや雨が気づかせなかったのかも)なりました。霧で後姿が霞んでいく子の後姿に「一人で行かせたこと、ママに言うなよ」

Dsc07263 無事に帰れ!

 でも、かみの怒りを心配する前に本当に帰らなかったらどうするんだ?ゆっくりと下山する一歩一歩に不安が募って、すぐに長男の後を追っていました。その頃には風雨で視界もなく、見上げる山頂は真っ白な世界です。体力の限界!九合目の鳥居まで登って追いつけなかったので、そこで待つことにしました。

 そして1時間。寒さに震えながら待ちましたが、動いていないとこっちがお陀仏だと危険を感じて、ゆっくり下山することにしました。明るくなってくるにつれて雨が強くなってきましたが、不安は軽くなってきました。荒天にもかかわらず多くの人が列をなして登ってきたからです。その中でも半袖・短パン・スニーカー姿の外人さんには、驚くというより呆れました。いやいや、欧米には勝てない訳です。こんな連中が山頂に向かっていれば、長男にとっては頼もしい限りです。

 その後、6合目で1時間待ち。更に5合目の登山口に下山し、振り向いた途端、目の前に長男が下りてきていました。聞けば、9合5勺の万年雪を見た辺りで、寒さに負けて下山してきたそうです。寸でのところで登頂を諦めた長男の冷静な判断を感心するとともに、山頂を踏んで勝利宣言されなかったことを安堵するどこまでも賤しい父でした。

 「またリベンジしようぜ!」と再戦を誓う父に、「もういいや」呆気ないほどの子の返答でした。父親の信頼はすっかり失墜してしまったようです(汗)

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