キツネを訪ねて乙女高原
山梨県の北部、奥秩父から甲府盆地にかけて広がる広大な山並みを東西に貫くのが、クリスタルラインです。クリスタルラインは、全長約70km、標高1千メートルの高所を通じる幾つかの林道の総称ですが、この地域が水晶の産地であったことに由来しています。奥秩父からなだれ落ちる深い森と雄大な展望を楽しめる山岳ドライブルートです。
大人気!シャインマスカットも
クリスタルラインに入る前に必ず寄るのが、東端に当たる山梨市牧丘地区、R140沿いにある道の駅「はなかげの郷まきおか」です。秋口は果物の最盛期、粒ぞろいの巨峰、マスカットを始め、桃、梨、すももなどが賑やかでした。さすがはフルーツ王国山梨です。コノ頃我ガ家ニハヤルモノ、夜討、強盗、偽綸旨…もとい、シャインマスカットを手に、天然児もご機嫌です。
牧丘からねるねるねるねな道を30分ほど走ると、乙女湖こと琴川ダムを見下ろす高台に位置する柳平。ひなびた山荘があるこの場所は、クリスタルラインと奥秩父の高嶺を越える川上牧丘林道の分岐点です。幼い子が母親に連れられて遊んでいました。人里離れた大自然の真っ只中。この環境に育つ子は、けがれを知らない健全な大人になることでしょう。
川上牧丘林道は、標高2365mの大弛峠を越えて長野県川上村に通じるスケールの大きい林道です。乗鞍スカイラインがマイカー規制されて以来、マイカーで行ける最高所となりました。ちょうど5年前、雷雨の中をババ、天然児の三世代編成で越えた思い出深い道であります。(参照:http://yama-umi.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-547c.html)
夕方の焼山峠にやってきました。実はこの何の変哲もない峠が、今回ドライブの目的地だったのです。最近、この峠周辺にキツネが出没して、通る人から餌をもらって人馴れしてしているという話を耳にしました。そんなキツネに会ってみたくて、天然児を連れてやってきたのですが…
既に車の通行もなく、聞こえてくるのは秋虫の鳴き声だけ。キツネの登場にはうってつけの雰囲気なのですが…いませんでした(笑)
焼山峠から少し小楢山方面の登山道に分け入ったところに、沢山のお地蔵さんが集まる場所があります。「子授け地蔵尊」と呼ばれるこの場所には、次のような言い伝えが残されています。
江戸時代の頃、この峠の麓に木地師(木工品を製作する職人)の夫婦が住んでいたそうです。ある日、焼山峠付近で木を切り出していると、赤ん坊の泣き声がします。声のする場所へ行ってみると、そこには小さなお地蔵さんが置かれていたそうです。子供のいなかった夫婦は、このお地蔵さんを家に持ち帰ってお供えをしたところ、子供を授かったそうです。喜んだ夫婦は、お地蔵さんを山に返すとき、お礼にもう1体お地蔵さんを祀ったそうです。以来、子供に恵まれない夫婦がこの地を訪れて、子授け地蔵尊の言い伝えに倣ったので、この地には多くのお地蔵さんが集まっているそうです。
キツネに会えなかったので、クリスタルラインを少し進んで乙女高原にやって来ました。標高1700mの乙女高原は、鬱蒼とした深い森の奥秩父の山中にあって、古くから萱刈場や放牧地として切り開かれた草原です。戦後まもなくして、ここにスキー場が開設されて、15年ほど前まで営業されていたそうです。スキー場が廃止された後も、この場所を愛する人たちによって草が刈られて、美しい高原が保全されているのです。
そのお陰で、初夏にはシャクナゲやレンゲツツジが見事に咲き乱れて、春から秋にかけて、多くの高山植物が咲きそろう花の名所として、多くの人がハイキングを楽しめる場所になりました。
人気のない高原の駐車場で、キツネに呼びかけてみましたが、帰ってくるのはやはり秋虫の鳴き声だけ。ルールルル…声は虚しく秋空に上って行きました。コンちゃん、また会いに来るね。
その頃、車内では天然児がシャインマスカットをほおばっていたのでした。
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