変えてはならぬ温泉記号 磯部温泉にて
碓氷峠から流れ出る碓氷川の段丘上に、10件ほどの温泉旅館が集まる磯部温泉があります。この磯部温泉には、誰もが知っている昔話「舌切り雀」の伝承があって、舌切り雀のお宿として古くから知られていますが、首都圏からも特急で2時間弱という立地から、古き良き?時代、社員旅行で訪れる温泉場としても賑わいました。
余談ですが、大磯町のマスコットキャラクターに「いそべぇ・あおみ」というのがいるのですが、このキャラは、町の照ヶ崎海岸に潮水を飲みに来るアオバトをモチーフにしているんですが、最初にこのキャラを見たときには、鳥キャラだし、名前が「いそべぇ」ということもあって、「ああ、磯部温泉の舌切り雀な」と知ったかぶりをしていましたが、その後、大磯町のキャラクーと知って、人に言わないでよかったと思ったことがありました。
この磯部温泉、今回の研修所から4kmほどの場所に位置していて、ちょっと遠いのですが、朝のウォーキングで往復してみました。R18(別に怪しいものではありません。国道です)から温泉街に向かうと、碓氷川を渡るのですが、この橋の名前が「愛妻橋」。何とも私にはふさわしくないですね。上州といえば「かかあ天下にからっ風」の風土。群馬県の殿方はレディーファーストですね。まあ、それは置いておいて、この橋の上からは、碓氷川と温泉場を見下ろし、妙義山の雄姿を望める絶景スポットです。
橋を渡って、すぐ右手に日帰り温泉「恵みの湯」があります。この日の研修終了後、研修所でチャリを借りて再訪、入浴しましたが、私好みのぬる湯とツルツル感、湯上りのホンワカ感もあって、なかなか良かったですね。3時間までの滞在で500円というのも安い!のんびりしていきたかったのですが、夕食と門限の制限があったので、残念ながら早々に切り上げました。次回はもっとゆっくりしていきたい場所ですね。
「恵みの湯」のすぐ先、磯部交差点を右折すると駅前の狭い商店街に入ります。来る途中の道でも感じたのですが、ご当地群馬県は自動車社会。朝夕の通勤時間帯にはマイカーの往来が激しくて、狭い路地にもどんどん車が入り込んできます。そんな車が脇をかすめる道を通学の子供たちが平然と歩いている光景。神奈川県民としては、ナニコレ珍景というか、かなり危険に感じました。
駅前からの道を突きあたると磯部公園があります。温泉街の中心にあるこの公園には、ご当地を愛した若山牧水や北原白秋らの文人たちが詠んだ詩碑があって、別名「詩碑公園」とも呼ばれています。そして、ここにもあった「愛妻の池」石でも投げ込んでおきましょうか。
そして、この公園で見ておきたいのが「温泉記号発祥の地」の石碑です。何故、この磯部温泉が温泉記号発祥の地かといいますと、今から約350年前の江戸時代・万治年間、この地で農民の土地争いが生じたとき、評定所の裁定が記された地図に磯部温泉の位置を「♨」で印したことが、最古の温泉記号なのだそうです。
地図記号の温泉記号「♨」は、数ある地図記号の中でも一番特徴をとらえていて、子供からお年寄りまで最も認知されている記号だと思います。その温泉記号を国が変えようとしているっていうんですから、今ちょっとした騒動になっているようですよ。
話は、経産省が2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、現在使用されているJIS規格の地図記号や標識が外国人に分かりづらい、誤認を招きかねないという理由で、ISO規格に大幅修正することを発表したことに端を発します。
お寺を表すまんじ「卍」がナチスのシンボルマーク「ハーケンクロイツ」に酷似していることなどはその最たるものですが、「♨」記号も、外国人にとっては、暖かい料理を提供する飲食店や喫茶店に誤認されるというのがその理由だそうです。
Why! Japanese People!従来のJIS規格の地図記号は、日本の歴史や文化に由来して定められた日本人にとっては分かりやすいものなのに、一過性の東京五輪で訪れる外国人の為にわざわざ変更する必要があるんでしょうか?五輪に出場する競技選手はともかくとして、日本を訪れる外国人観光客は、我が国の文化や歴史に興味があるわけですから、地図記号だって当然勉強してくるし、それを解説したガイドだって山のように発行することでしょうよ。
最初は敗戦国らしい外国への遠慮をまたするのかと憤慨しましたが、地図記号を変更することで、地図・書籍やら標識やらと社会全体に波及する経済効果も狙っているのではないかと、アベノミクスのいやらしい一面を垣間見たような気がしました。ご当地磯部温泉にとって「温泉記号発祥の地」というキャッチコピーが失われてしまうことは、観光にとって死活問題です。安中市も市をあげて、温泉記号の変更に対して反対を表明しているそうです。私も断固として変えてほしくはありません。
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